歯周ポケットは、歯と歯茎の溝のことです。“歯肉溝”とも呼ばれています。
歯と歯茎はくっついているように見えますが、健康な人でも1mm程度の溝があり、食べかすなどの汚れがたまりやすい場所です。
「歯周病」はこの歯周ポケットがどんどん深くなり、治療をしないでいると最後は歯が抜け落ちてしまう病気です。
今回はこの「歯周ポケット」についてのお話です。
歯周ポケットはどうして深くなるの?
お口のなかには良い菌も悪い菌も含めて60億を超える菌が住んでいます。悪い菌の代表選手、歯周病菌のジンジバリス菌は糖分とたんぱく質が大好き。
歯周ポケットは溝という構造上、食べかすや歯垢などの汚れがたまりやすく、かつ、歯ブラシではその汚れをかき出すことができません。すると、食べかすや歯垢に含まれる糖分とたんぱく質を求めて歯周ポケットに歯周病菌が集まってきます。
エサを食べて歯周病菌は増殖、そして空気を嫌う性質があるため歯周ポケットの奥へ奥へと侵入します。歯周病菌が侵入してきたことを体が察知すると、菌から体を守ろうと防御反応をとった結果、歯茎が炎症を起こします。
この炎症こそが歯周ポケットが深くなる原因です。炎症を起こすと、歯と歯茎の密着が引きはがされてしまうため歯周ポケットが深くなってしまうのです。
歯周ポケットの深さと歯周病
健康な人の歯周ポケットの深さは1mm程度、菌が侵入し炎症を起こしている歯肉炎の状態は2~3mmです。
軽度歯周病:3~5mm
歯肉の腫れが大きく、歯を支える歯槽骨が破壊され始めます。
中度歯周病:4~7mm
歯槽骨が歯の根っこの半分まで破壊され、歯がグラグラし始めます。
重度歯周病:7mm以上
歯槽骨が半分以上破壊され、歯がグラグラし抜け落ちます。
検査と治療方法
歯周病の検査は次の4つがあります。
プロ―ビング検査
プローブという針状の道具で歯周ポケットの深さを測ります。
歯の動揺度検査
ピンセットで歯をつまみ、歯がグラグラしないかを検査します。
プラークの付着度検査
プラーク(歯垢)の付着状況を検査します。
レントゲン検査
歯槽骨の状態をみます。
軽度・中度歯周病の方は、歯垢・歯石を徹底的に落とすことがメインの治療です。歯科医院では器具を用いて除去が難しい歯の根っこ部分や、自分では落とすことができない歯石を除去します。ご自宅では、歯ブラシの他にデンタルフロスも使ってケアをしましょう。毎日・毎食後のケアが最大の治療です。
重度歯周病の方で歯垢・歯石の除去を続けても改善されない時は、外科的な手術を行います。破壊された組織を再生させる効果がある素材を歯茎と歯周組織の間に入れる手術です。組織が再生し歯周ポケットが浅くなることを目的としています。また、治療法として外科的治療のほかに高周波治療で改善します。外科的治療の前に、痛くない方法ですのでお勧めです。
このように、歯周病は進行すると歯を失う原因となる病気です。現在では、根気よく治療を続けることで進行した歯周病も進行を阻止し、改善することが可能です。
しかし、歯科としてはまずはかからないようにする「予防」を第一に考えていただきたいなと思っています。なぜなら、もし一度歯を失ってしまえば元にもどすことはできないからです。なにも気になる症状がないという方も、ぜひ今から、歯科予防をはじめてみませんか?