胎児・乳幼児期の栄養状態が成人になってからの健康状態に大きな影響を与えるという 興味深い報告があります。2008年「The NewEngland journal of medicine]に載った論文に「胎児および乳幼児の栄養状態がよくないと、生下時(出生時)や乳幼児期の体格が悪い」という内容でした。これはそのまま理解できますが、非常に驚くことは、これらの子供達が成人になってから、冠動脈疾患、脳血管障害、2型糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、骨粗鬆症を発症しやすいという点です。
胎児期から、おそらく乳幼児期の初期にかけて、量と質に適切な栄養状態があるようです。すなわち、栄養状態が良すぎても、少なすぎても、のちのち代謝疾患が起こりやすいというのです。
「体というのは、赤ちゃんの時の栄養状態を記憶しているのではないだろうか」ということで、メタボリックメモリーと呼んでいいのではと思います。妊産婦のための食生活・妊娠前からの健康な体づくりが大切です。
京都大学大学院 人間環境学研究科 津田謹輔教授
『胎児の栄養状態と糖尿病』より抜粋
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