いつから始める?食育の進め方
食育の究極の目的とは、「生涯を通じておいしく食べられる力を育むこと」です。それには、歯の健康とは切り離して考えることはできません。お子様の食育、いつから始めればいいの?と迷っている親御さんも多いようですが、食育にいつからということはありません。
生きること=食べることです。つまり、食育のチャンスは生まれた時から始まっているのです。ここでは、歯から見た食育の進め方を紹介します。
お母さんのお腹の中で既に食育は始まっている
おいしく楽しくものを食べることに、歯の健康は欠かせません。歯の健康の基礎は、小児期に形成されます。しっかり噛んで食べる機能を育み、健康な歯と口腔の機能を備えるため、ライフステージに合わせた食育の進め方を考えましょう。
まず、胎児期には、母体の栄養状態や健康状態が子供の健全な発育に大きな影響を及ぼします。歯と口腔の基礎も、母体内で形成されます。お母さんは、生活習慣を乱さないよう注意し、バランスのとれた食生活を送るようにしてください。
お母さんの口腔の健康と、これから生まれるお子様の口腔との関わりが大きいことが近年の研究で解ってきています。妊娠中に、必ず歯科検診を受けるようにしてください。
乳児期・離乳期は、口腔の機能が発達する基礎を作る重要な時期です。赤ちゃんの免疫機能を高める効果があるので、母乳を飲ませる期間はできるだけ長くしましょう。
見る、触る、嗅ぐ。五感を通じて食への感覚が育まれる
離乳食が始まった頃は、お子様が食べ物と仲良くなる時期です。食べ物と親しみ、口に取り込む、噛む、飲み込むといった食べる行為を学んで身につけていきます。
この時期、指を吸ったり、おもちゃを口に運ぶといった遊びが始まりますが、こういった行動により、食べるための口・唇・舌・あごの力をつけて、食べ物の大きさを感じ取ることができるようになります。無理に止めさせないことも食育の一貫です。
また、母子健康手帳には、1歳3ヶ月で離乳完了との記載がありますが、実際にお子様に第一乳臼歯が生え始めるのは、1歳4ヶ月頃です。さらに、上下の第一乳臼歯の噛み合わせは1歳8ヶ月頃に出来上がります。この時期、少しずつ硬いものを噛んで飲み込む力をつけていきます。歯の生え方を観察して、歯の状態に合わせて食べ物の硬さを変えていきます。スプーンで食べさせる時も、一口に与える量を変えていきます。
離乳食が進むと、手づかみ食べが始まります。後片付けが大変ですが、十分に手づかみ食べを体験させましょう。噛んで食べる機能の発達には、非常に大切な経験になります。この時期から幼児期にかけて、お子様の味覚が発達していきます。ベビーフードだけではなく、手作りのバラエティに富んだ離乳食を食べさせることにより、味覚だけでなく視覚や触覚、嗅覚など、五感を通じての食への感覚が育まれます。
健康な心身を育むための基礎となる「楽しく食べる力」
お子様があごを横に動かして、すりつぶすような噛み方ができるようになれば、離乳食完了です。一般的には乳歯の奥歯の噛み合わせが完成する1歳6ヶ月頃ですが、個人差もあります。
3歳頃には乳歯が生えそろいます。いろいろな食べ物を噛んで飲み込むことができるようになります。この頃は、噛む力を高めるために、大きさのある食べ物、ある程度の硬さがあるもの、歯ざわりを感じられるものを食べる体験をさせましょう。また、この頃に、日本の伝統食である箸を使った食事の方法、お茶碗の持ち方なども教えるようにします。
この時期、早食いや食べ物を丸のみする癖、間違った食事のマナーなどが身についてしまうと、生涯の食習慣に大きく影響を及ぼします。肥満や心身の健康を害す原因にもなりかねません。食事は、噛みごたえのあるものを用意し、しっかり噛んで食べているか、お子様が食事する姿を観察し、間違っていれば正しい方向へ導いてあげましょう。
ただし、厳しく叱りつけたりすると、子供にとって食事が楽しくないものとして印象づけられてしまいます。健康な心身を育むための食事を楽しくとれるよう見守りましょう。
まとめ
食育は、生涯を通じて食べ物をおいしく食べられる力をつけるうえで非常に大切です。それには、歯と口腔の健康は欠かせません。赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時から、食育のチャンスは既に始まっているのです。